奥多摩のいまでも鮎釣りの盛んな清流秋川の流域に位置し、秩父古生層にこされた清冽な多摩山系の水を地下170メートルより汲み上げ、厳選した米で醸造しています。あきる野市は、冬の冷え込みが厳しく酒造りに非常に適した気候です。仕込み蔵は江戸時代に建築された土蔵と、一年を通じて10℃以下に保たれる空調完備の近代蔵の両方の特長を生かし醸造しています。
酒造好適米を高精白し、和釜に甑(こしき)、蓋麹(ふたこうじ)などの手造りの要素を多く残しつつ、全自動製麹機などの近代的な酒造技術を取り入れて丁寧に造っています。
これにより、淡麗型でありながらも米の旨みをしっかりと感じられる清酒を醸しています。
酒造り:
『ちひさきもの』たちのために
私が杜氏として日々の仕事をする時にいつも頭の片隅にある歌があります。
めにみえぬ
ちひさきものの ちからもて
これのうまさけ
かますかみわざ
この歌は、私たちお酒造りにかかわる人間にとっては神様のような先生が詠んだもので、
酒造りの不思議さや『ちひさきもの』(=酵母や麹菌などの酒造りにかかわる微生物)の働きへの感動の思い
を詠んでいるのかと思います。
この歌を私なりに解釈するとこうなります。
あくまでも清酒を造るのは『ちひさきもの』である。
ましておいしい清酒を醸すのは『ちひさきもの』たちの『かみわざ』であるので、
私たちお酒造りにかかわる人間が出来る事と言えば、『ちひさきもの』たちに『うまさけ』(旨酒)
を造ってもらうお手伝いくらいのものでしかない。
加えて誤解を恐れずに言えば、仕込み水、米の品種、精米歩合、酵母、麹菌の種類を決定した時点で、
その原料で出来るお酒の品質の最高到達点は決まるのであろうというのが私の考えです。
もちろん、その最高到達点というものは各時代、各地方のお客様の嗜好によって決定され、
酒造技術の進歩などにより日々変化してゆくものであり、様々な種類があるのだと思いますが、
その最高到達点にいかに近いものを醸すお手伝いが出来るのかが、私たちの仕事だと思っています。
私たち蔵人は、あくまでも『ちひさきもの』たちが、『うまさけをかます』サポート役に徹する。
日々の洗米、麹造り、酒母(しゅぼ)や醪(もろみ)の櫂入れ(かいいれ)、分析,搾り等々酒造りにかかわる
すべての工程を、その『ちひさきもの』たちのために誠実に行い続ける事が私のこだわりと言えるかと思います。
中村酒造
杜氏 佐藤潮彦